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アタマの負荷と、カラダの負荷。
皆さん、こんにちは。本日は「インタラクションコスト」について、T Fきりんさんにお話を伺います。よろしくお願いします。
こんにちは、よろしくお願いします。今日は、ユーザーインターフェースにおける「アタマの負荷」と「カラダの負荷」についてお話ししたいと思います。
「アタマの負荷」と「カラダの負荷」ですか?とても興味深いですね。詳しく教えてください。
私たちは生きているだけでエネルギーを消費しています。料理を作ったり、服を着て歩いたり、スマートフォンで買い物をしたり、どんなときも労力を払って目的を達成しています。
ツールや道具の良し悪しを判断する目安の一つは、その効果が高いか、操作が容易かです。別の言い方をすれば、アウトプットのパフォーマンスが高いか、インプットのコストが低いかということですね。ユーザーインターフェースの分野では、特にインプットのコストが低いことが重要です。
なるほど。つまり、あまり考えずに迷わず使えるインターフェースが理想ということですね。
その通りです。もし、ほとんど何も考えずに間違えずに使えるインターフェースが実現できたなら、それはデザインとして大成功と言えるでしょう。
操作で支払うコスト
インタラクションコストとは
具体的に、ユーザーはどのようなコストを支払っているのでしょうか?
ユーザーがインターフェースを操作するとき、頭で意味を考え、理解し、手や指を動かして操作します。つまり、常に「アタマ」と「カラダ」を使っているわけです。
この2つの領域で支払うコスト、つまりアタマの負荷とカラダの負荷を合算したものを「インタラクションコスト」と呼びます。インタラクションコストが少ないほど、操作が楽になります。
ということは、良いインターフェースとはインタラクションコストが少ないものなんですね。
その通りです。操作の分かりやすさ、手数の少なさ、反応の速さなど、すべてがインタラクションコストに関係しています。
認知負荷:アタマの支払うコスト
まず、「アタマの負荷」について詳しく教えてください。
はい。アタマの負荷は「認知負荷」とも呼ばれ、考えたり悩んだり判断したりする頭脳的な負担のことです。「分かりにくい」と感じるときは、この認知負荷が高まっています。
認知負荷を下げるためには、どうすれば良いのでしょうか?
ユーザーに考えさせない、悩ませないデザインが重要です。例えば、ボタンのデザイン一つでも違いがあります。明確な色や形でボタンを示すと、「押せる」とすぐに分かります。
一方で、テキストだけのボタンだと、ユーザーは「これ、押せるのかな?」と迷ってしまいます。重要なボタンは視覚的に目立たせることで、認知負荷を下げられます。
現在地の手がかりを明示し、一貫性を持たせる
全てのボタンを目立たせれば良いというわけではないのですね。
そうです。重要でない機能まで強調すると、逆に混乱を招きます。適切な情報を適切な強さで表示することが大切です。また、ナビゲーションの一貫性や現在地の明示も、認知負荷を下げるポイントです。
他にも認知負荷を下げる方法はありますか?
はい。例えば、文章のレイアウトです。横幅いっぱいに広がった文章は読みにくく、適度な幅で折り返すと読みやすくなります。文字の大きさや行間も影響します。
サービス内でのルールを一貫させることも重要です。ユーザーに考えさせる要素を減らすことで、認知負荷を下げられます。
身体的負荷:カラダの支払うコスト
次に、「カラダの負荷」について教えてください。
カラダの負荷、つまり「身体的負荷」は、指を動かす、繰り返し操作するといった身体的な労力です。いわゆる「使いにくい」と感じる原因の一つです。
デバイスによって違いはありますか?
もちろんです。PCでは気にならない操作でも、スマートフォンでは面倒に感じることがあります。テレビのリモコン操作では、さらに負荷が高まります。
例えば、画面の右上にある「検索」ボタンを押す場合、PCではマウスで簡単にクリックできます。しかし、スマートフォンでは親指を大きく伸ばす必要があります。リモコンでは何度もボタンを押してフォーカスを移動させなければなりません。
身体的負荷を抑える工夫
デバイスごとの配慮
身体的負荷を減らすために、どのような工夫がされていますか?
各社とも様々な工夫をしています。例えば、iPhoneでは「簡易アクセス」という機能があり、画面上部を下にスライドさせて親指で届きやすくしています。
また、キーボードを片手操作しやすいように、左右に寄せる設定もあります。
操作回数を減らすデザイン
操作回数を減らすことも重要なんですね。
はい。例えば、Apple TVでは英数字入力の際に、文字を横一列に並べています。これにより、上下の移動回数を減らし、左右の移動だけで操作しやすくしています。
FacebookのAndroid版では、画面上部のタブを操作しなくても、スワイプでページを切り替えられるようにしています。親指が届きにくい場所への操作を減らす工夫です。
アタマの負荷とカラダの負荷、どちらを優先する?
アタマの負荷とカラダの負荷、どちらを優先すべきでしょうか?
それは状況によりますが、大まかな方向性はあります。
利用頻度が少ない場合は、アタマの負荷低減を優先する
例えば、新規登録フォームのように、一度しか使わないものでは、アタマの負荷を減らすことを優先します。手数が多くなっても、分かりやすさを重視するのです。
その理由は何でしょうか?
一度しか使わないので、ユーザーは慣れていません。だからこそ、理解しやすいデザインが重要です。最近では、入力フォームを複数のステップに分けて提示することが多いですね。
利用頻度が多い場合は、カラダの負荷低減を優先する
逆に、毎日使う機能や繰り返し操作するものでは、カラダの負荷を減らすことを優先します。手数を少なくし、効率的に操作できるようにします。
ユーザーが慣れていくから、アタマの負荷は自然と下がるということですね。
その通りです。ユーザーは使うたびに操作を覚えていきます。一方、カラダの負荷は毎回同じなので、ここを減らすことで全体の負荷を下げられます。
利用シーンに応じて、どちらを優先するか決めるのが大切なんですね。
そうです。ユーザーの状況や目的に合わせて、インタラクションコストを最小化するデザインが求められます。
とても勉強になりました。ありがとうございます!
本日は貴重なお話をありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。また何かあればお気軽にご相談ください。