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デザインとは何なのだろうか?
皆さん、本日はお越しいただきありがとうございます。今日は「見た目としてのデザイン、機能としてのデザイン」というテーマで、UI/UXデザイナーのT Fキリンさんにお話を伺います。キリンさん、よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
デザインって、一般的には「見た目」のことだと思っていました。でも、それだけではないんですよね?
そうですね。デザインという言葉は不思議で、多くの人にとっては「見た目」を指します。「このデザインは良くない」と言えば、パッケージやビジュアル面で劣っているという意味になります。
昨今のデザインは定義が変わってきている
最近では「デザインは機能だ」という考え方も耳にしますよね。
その通りです。「形態は機能に従う」という考え方や「機能美」という言葉もあります。
また、デザイン思考(design thinking)という言葉も出てきました。
これは、不確定や未知の問題に取り組むための反復的なプロセスです。おそらく、これらの使い方はどれも間違っていないでしょう。
しかし、私が語る「デザインは設計である!」という解釈では、「機能をビジュアルと構造に落とし込む行為」を意味しています。
デザインとは見た目のことではない
デザインは見た目だけのものではないんですね。
そうなんです。よくある誤解は、デザインが「絵」を意味しているという考えです。Appleの元CEO、スティーブ・ジョブズは「デザインとはどう見えるかではなく、どう機能するかだ」と言いました。
見た目としてのデザインは、例えば綺麗なグラデーションのボタンを描くことです。
それに対して、どう機能するかとしてのデザインは、どのような状態があり得るのかを吟味し、それぞれの姿を考え、どのように振る舞うのかを設計することです。
つまり、デザインとは見た目だけのことではなく、見た目を通してどう機能するのかが使う側に伝わることが重要なのです。
具体的な例はありますか?
以前、某コンビニエンスストアのドリップ式コーヒーマシンのボタンがわかりづらいと話題になりました。「HOT COFFEE」と「ICE COFFEE」の表示の下に、大きく「R」と「L」のボタンが置かれていて、それぞれ下に「REGULAR」と「LARGE」という表示があるだけでした。
大きさの意味で配置した「R」と「L」のボタンは、左右(RightとLeft)の意味と混同してしまいます。
さらに「R」が左に、「L」が右にあることで混乱に拍車をかけました。現在は日本語の表示が加えられ、混乱は減っていますが、これはデザインの問題と言えます。
デザインとは設計のこと
デザインと設計は同じ意味なんですか?
そうです。プログラムの世界では、よく使われる定型的な23の設計バリエーションをまとめた「デザインパターン(Design Pattern)」という手法があります。
また、自動車業界では、中心的な設計を担当する技術者を「チーフ・デザイン・エンジニア(Chief Design Engineer)」と呼びます。これらの事例が示すように、デザインとは日本語に訳すと「設計」です。
デザインが本来意味するところは、設計なのです。
デザインとアートの違いは何でしょうか?
良い質問ですね。デザインはアートではありません。デザインがアートに近づいたり重なり合う部分があったとしても、目的が異なります。アートは個人的な表現によって人の心を動かし鼓舞するものです。
それに対して、デザインの目的は見た目だけでなく、機能や働きによって何らかの課題を解決することです。
例えば、柳宗理のデザインしたバタフライスツールは、座り心地が特別良いわけではありませんが、造形美によって高い評価を得ています。これらの製品は、課題解決よりもアートとしての側面が強いデザインと言えます。
設計とはどういう行為か
機能をビジュアルと構造に落とし込むこと
設計とは具体的にどんな行為なんでしょうか?
設計という概念は広いですが、Webサイトやアプリに関することに限って言えば、設計とは「機能をビジュアル(見た目)と構造に落とし込む行為」です。
例えば、ショッピングサイトを作ろうとしたとき、概要と新商品がすぐに分かるトップページや、比較検討できる一覧ページ、仕様や魅力が分かる詳細ページなど、さまざまな機能が必要ですよね。
それらをどう見せて、どう組み合わせるかということが設計(デザイン)という行為なのです。
答えはひとつに絞られない(ただし良し悪しはある)
設計の仕方は一つではないということですね。
その通りです。ある機能を実現するためのビジュアルと構造には、いくつもの方法があります。
つまり、設計の仕方はひとつではないのです。
例えば、東京から名古屋に行くとしても、新幹線、車、自転車、徒歩など、いろいろな方法があります。そして、そのどれもが間違いではありません。
なぜなら、時間を優先するなら新幹線が、景色や自然を満喫したいなら車や自転車が適しているからです。ただし、徒歩が現実的でないように、設計には良し悪しがあります。
デザインの必要性
独占状態ではデザインの必要性は低下する
デザインはいつも重要というわけではないんですか?
実はそうなんです。この世にその機能がそこだけにしか存在しないならば、インターフェースや使い勝手の良し悪しはほとんど関係なくなります。代替手段がないので、それを使うしかありません。こういった状況では、デザインは本質的に重要なものではなくなります。
このような機能が独占状態にあるサービスは、公共機関や国営企業・公共サービスなどでよく見かけられます。競合相手が存在しないため、サービスを改善しようという動機付けが乏しくなりがちです。
競争があるときデザインは差別化要因になる
逆に、競争があるとデザインが重要になるんですね。
その通りです。同じ機能が世の中にたくさん現れたときには、デザインの良し悪しが重要な差別化要因となります。そして今や、ほとんどの機能やサービスは代替可能な状態にあります。
ユーザーを獲得するため、あるいは高い満足度を提供するために、デザインの重要性はますます高まっています。
UIデザインの意味
UIデザインとは使いやすさのデザイン
UIデザインについて詳しく教えてください。
UIデザイン(ユーザー・インターフェース・デザイン)とは何でしょうか?
デザインとは設計であり、設計とは機能をビジュアルと構造に落とし込む行為です。
UIデザインとは、ユーザーがサービスとやりとりするための接点を設計することです。
設計には良し悪しがあります。良い設計ならば使いやすく、悪い設計なら使いにくいでしょう。
つまり、UIデザインとは一言でまとめると、サービスをより使いやすくするためのデザイン、使いやすさのデザインです。
使いやすいデザインの要点
使いやすいデザインでは、迷ったり考えさせたりせず、余計な手間をかけさせることなく、インターフェースを直感的に使えるようにすることが要点になります。
どうすれば使いやすいデザインにできるのか、どこに分かりにくい原因があるのか、それらを明らかにしていくことが、これからのテーマです。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
とても勉強になりました。ありがとうございます!